育児と仕事と…時々家事と。

長男13歳、長女10歳、次男6歳と主人の5人家族です。仕事に育児に追われる中での出来事や感じたことを綴っていきます。

とあるお客様ご夫婦の切ない事情

急に涼しくなったせいか

久々に風邪を引いてしまったようです。





喉が焼けるように痛く

37.4度くらいの微熱が続きます。




歳のせいでしょうか。

気温の変化に弱くなってしまいましたね。





しかし

明日は小学校の夏のお祭り。




私は役員の為

一日中お手伝いになります…(涙)




何とか今晩で

ある程度回復すると良いのですが…。










金曜日の仕事中のことでした。





とあるお客様宅にお伺いしました。




大きなお屋敷にお住いの

七十代のご夫婦です。




大きなお屋敷を持っていながら

ご主人はガレージの二階の小部屋に住んでいます。




母屋には奥様が一人。




私はいつものように

ご主人の住んでいる小部屋に上がり

声を掛けました。




「どうぞー。」

思ったよりもお元気そうな声に安心して

ドアを開けると



ご主人は

額に冷えピタを貼って椅子に座っておられました。




「あれ?お風邪ですか?」


思わず訊ねると


「いや、大したことはない。

あんたの笑顔見たら元気になった。」


と笑ってみせてくれました。




「そろそろあんたがくる頃だと思ってお湯を沸かしておいたんだ。」

とコーヒーを入れて下さいました。




そして

もう50年も使っているという

ご自慢の機器で音楽をかけてくれるのです。




昭和の歌謡曲ですが

それを二人で聴いてコーヒーを頂きました。






このお客様は

私が仕事を始めて

初めてお客様になって下さった方です。




奥様の

「あんた、感じ良いから買ってやるよ!」

と言って下さったことが嬉しくて

忘れられません。




それから毎週お伺いするようになったのですが


知れば知る程

このお客様ご夫婦には

複雑な事情がある事が判っていきました。




奥様は

とても元気で明るい方ですが

ある難病を抱えており



ご本人は

「私は難病を克服した。」

と仰っているのですが



ご主人のお話では

どうやらそうではないようなのです。





日に日に

悪くなっていく体調に

不安と恐怖で一杯の奥様。




少し前まで

お伺いする度に

ご主人の住んでおられる小部屋のドアが

ボコボコに凹んでいることがありました。




奥様が

夜な夜なお酒を飲んでは

ご主人に殴りかかるのだそうです。




ドアを閉め鍵を掛けていると

畑仕事で使うくわなどで

ドアを壊そうとするので

何度か警察に電話をしたそうです。




私にはそれを笑って話すご主人でしたが

明らかに憔悴しきった様子に

とても心配していました。





そんな状態が2ヶ月くらい続いたでしょうか。




最近は

元のように仲の良い姿が見られるようになり

ホッとしていました。







音楽を聴きコーヒーを飲みながら

ご主人がポツリと言いました。




「かみさん、もう長くねぇんだよ。」




定期検査の度に数値が悪くなり

お医者様からもそう言われたそうです。




「多分、今度入院したら最後になるから、来月は二人で温泉に行こうって話してるんだ。」




そう仰ったご主人も

実は難病が見つかったところだとつい先日聞かされたところでした。




多分、今回の発熱も

その病気のせいだと私は思いました。




本来なら

ご自身も入院しなくてはならない状態ですが

今自分が入院するわけにいかない

と断り続けます。





ご主人のお財布から

お金を抜き取り

パチンコかお酒を買いにお出掛けになる奥様。




ご主人はそれを笑って

「もう、好きにさせてやろうと思うんだ。」




ご主人の愛が深すぎて

とても涙が出そうな思いでした。




帰り際に

「コーヒーご馳走様でした。とっても美味しかったです。」

とお声を掛ければ




「喜んでもらえたなら良かった。

知ってるか?人生って誰かに喜んでもらうのが一番なんだってよ。」

とご主人が仰いました。




「そうですね。改めてご主人から聞かされると、全くその通りだと思います。」

と答えました。




ご主人の

何かを覚悟したような

そんな眼差しがとても印象的な日でした。